目次
1. 変形性股関節症とは?
変形性股関節症は、股関節の軟骨がすり減り関節が変形する疾患で、加齢・筋力低下・関節形態異常(臼蓋形成不全など)が主な原因です。
進行すると、歩行や階段昇降が困難となり、生活の質(QOL)が大きく低下します。
2. 股関節の解剖学的特徴
股関節は、
- 大腿骨頭(球状の骨)
- 寛骨臼(骨盤のくぼみ)
からなる球関節です。
この関節は「可動性」と「安定性」を兼ね備えており、以下の要素で安定しています。
- 関節唇(線維軟骨)
- 関節包・靭帯(腸骨大腿靭帯・恥骨大腿靭帯・坐骨大腿靭帯)
- 周囲筋群(殿筋群・腸腰筋・内転筋など)
👉 特に「筋肉による安定性」が重要であり、筋力低下やアンバランスが変形性股関節症の進行に直結します。
3. 股関節周囲筋とその作用(起始・停止を含む)
🔹 大殿筋(だいでんきん)
- 起始:腸骨後面、仙骨、尾骨
- 停止:大腿骨殿筋粗面、腸脛靭帯
- 作用:股関節伸展・外旋
👉 歩行時の蹴り出しに関与。弱化すると股関節前方に負担が集中。
🔹 中殿筋(ちゅうでんきん)
- 起始:腸骨外側面
- 停止:大腿骨大転子
- 作用:股関節外転・骨盤の安定化
👉 片脚立ちで骨盤が落ちないように支える。弱化すると跛行(トレンデレンブルグ徴候)が出現。
🔹 小殿筋(しょうでんきん)
- 起始:腸骨外側面
- 停止:大腿骨大転子前面
- 作用:股関節内旋・外転
👉 関節包と密接に付着し、股関節安定性に寄与。
🔹 腸腰筋(ちょうようきん)
- 起始:腰椎横突起・椎体(腰筋)、腸骨窩(腸骨筋)
- 停止:大腿骨小転子
- 作用:股関節屈曲・外旋
👉 歩行時に脚を振り出す筋。硬さが出ると前方でのつまり感や可動域制限を助長。
🔹 内転筋群(だいたんきんぐん)
(長内転筋・短内転筋・大内転筋など)
- 起始:恥骨・坐骨
- 停止:大腿骨後面
- 作用:股関節内転・内旋
👉 骨盤と股関節の協調性を保つ。弱化すると膝・股関節の内側に過剰なストレス。

4. 変形性股関節症と筋肉の関係
- 大殿筋・中殿筋の弱化 → 骨盤が不安定になり、股関節内側に圧縮ストレスが集中。
- 腸腰筋の硬さ → 前方での関節包が圧迫され、痛みや可動域制限を悪化。
- 内転筋の弱化 → 大腿骨頭が外側へずれやすくなり、関節の摩耗が進行。
👉 つまり「大腿四頭筋ばかりを鍛える」のではなく、殿筋群・体幹・股関節安定筋の強化がカギになります。

5. 改善・予防のための運動療法
🔹 ストレッチ
- 腸腰筋ストレッチ(股関節前方の圧迫を軽減)
- 大殿筋ストレッチ(後方組織の柔軟性改善)
🔹 筋力強化
- サイドレッグリフト(中殿筋)
- ヒップリフト(大殿筋・ハムストリング)
- ボール挟み運動(内転筋)
👉 ポイントは「動きを制限するのではなく、正しい可動性と安定性を取り戻すこと」。
6. ピラティスでのアプローチ
ピラティスでは:
- 股関節と骨盤を分離してコントロールする練習
- インナーマッスル(腹横筋・骨盤底筋)の強化
- 正しいアライメントでの股関節運動
が可能です。特にリフォーマーを用いると、重力をコントロールしながら安全に動けるため、変形性股関節症の初期〜中期に有効です。
まとめ
- 変形性股関節症は、関節の形態+周囲筋の弱化や硬さによって進行する。
- 鍛えるべきは「大腿四頭筋」ではなく、殿筋群・腸腰筋・内転筋とのバランス。
- 解剖学的な理解に基づいた運動療法・ピラティスが、症状改善と予防につながる。