はじめに:ピラティス、初めての日のことを思い出してみてください
「体幹ってどこを使えばいいの?」
「呼吸を意識しろって言われても、どう動かせばいいかわからない」
ピラティスを初めて受ける方の多くが、最初はこんな戸惑いを感じます。
でも安心してください。運動経験がゼロでも、体の使い方は必ず変わります。
なぜならピラティスは、日常生活の動きを改善することを目標にした運動だからです。
理学療法士として多くの方を見てきた経験からも、ピラティスは「体の感覚を取り戻す」ことに非常に有効です。
呼吸や体幹の意識、肩や骨盤の動きなどを整えることで、日常生活の動きがスムーズになり、疲れにくい体が作られます。

理学療法士目線で考える“体の使い方”
日常生活で私たちは、無意識のうちに体を使うクセを持っています。
- 肩が前に丸まり、巻き肩になっている
- 座ると腰が丸まり、骨盤が後傾してしまう
- 足の裏に均等に体重が乗らず、片足に負担がかかっている
- 立っていると腰がそりすぎて腰痛になる
こうしたクセは、運動経験の有無に関係なく起こります。
そして放置すると、肩こりや腰痛、姿勢の悪化などにつながります。
ピラティスは、体の深層にある筋肉(インナーマッスル)を目覚めさせ、正しい動作パターンに導く運動です。
理学療法士の視点では、ピラティスは単なる筋トレではなく、**“神経と筋肉の連携を整える運動”**とも言えます。
ピラティスをすると体はどう変わる?
ピラティスを続けることで、体にはさまざまな変化が現れます。
1. 体幹が安定する
腹横筋・多裂筋・骨盤底筋などのインナーマッスルが使えるようになり、姿勢が自然に整います。
これにより腰痛や肩こりの予防にもつながります。
2. 肩甲骨や骨盤の動きがスムーズになる
巻き肩や猫背が改善され、肩や腰の可動域が広がります。
腕や脚の動きも軽やかになり、日常動作がラクになります。
3. 呼吸が深くなる
胸郭や横隔膜が正しく動くことで、呼吸が深く安定。
酸素供給が良くなり、疲れにくくなるだけでなく、リラックス効果も期待できます。
4. 運動の効率が上がる
体の軸が安定すると、立つ・歩く・持つなどの日常動作も効率的になり、体の負担が減ります。
さらに、筋肉の使い方が整うため、軽い運動でも効果を感じやすくなります。
解剖学的視点が大切な理由
ピラティスでは、ただ動けばいいわけではありません。
どの筋肉を使い、どの関節を意識するかが、効果を左右します。
例えば:
- 腹直筋ではなく腹横筋を使うことで、腰に負担をかけず体幹を安定させる
- 肩を持ち上げず肩甲骨を背骨に近づけることで、肩こりを防ぐ
- 骨盤の前傾・後傾を意識して動くことで、腰痛予防につながる
こうした意識は、運動経験ゼロの方ほど重要です。
「体がどう動いているか」を感じながら動くことで、正しい姿勢や体の使い方が自然に身につきます。

初心者でもできるおすすめエクササイズ3つ
1. ペルビックティルト(骨盤の前後傾運動)
効果:骨盤周りの安定、腰痛予防、腹横筋の活性化
やり方
- 仰向けに寝て、膝を立てる
- 息を吐きながら骨盤を床に押し付けるようにゆっくり前傾
- 息を吸いながら骨盤をニュートラルに戻す
- 10回を目安に繰り返す
ポイント:腰を反らせず、お腹を使う意識を持つこと
2. ショルダー・ブレードスクイーズ(肩甲骨寄せ運動)
効果:巻き肩改善、肩甲骨周りの筋肉強化、姿勢改善
やり方
- 背筋を伸ばして椅子に座る
- 息を吐きながら肩甲骨を背中で寄せる
- 息を吸いながらリラックス
- 10〜15回繰り返す
ポイント:肩を持ち上げず、肩甲骨だけを動かすこと
3. ブリッジ(骨盤・背骨の連動運動)
効果:お尻と背骨周りの筋肉を強化、体幹安定、腰痛予防
やり方
- 仰向けに寝て膝を立てる
- 息を吐きながらお尻を持ち上げ、肩から膝まで一直線になるようにする
- 息を吸いながらゆっくりお尻を床に戻す
- 10回を目安に繰り返す
ポイント:腰を反らさず、お尻と腹筋を意識する
ピラティスを続けるコツ
- 毎日5分でもOK。短時間でも意識して動くことが大切
- 呼吸を意識するだけでも効果がある
- 体が変わっていく過程を楽しむ
- 無理に回数や時間を増やさず、自分のペースで継続する

まとめ:運動経験ゼロでも大丈夫

- ピラティスは、運動経験がなくても安全に体の使い方を改善できる
- 理学療法士目線で、解剖学的な意識を持つことが効果を最大化
- 体幹の安定、肩甲骨・骨盤の動き改善、呼吸の深さ、日常動作の効率化に効果的
- ペルビックティルト、ショルダー・ブレードスクイーズ、ブリッジなど、初心者でも簡単に始められるエクササイズがある
- 小さなステップから、正しい体の使い方を学ぶことで、姿勢も体の動きも驚くほど変わる