現代人の多くが悩む「肩こり」「巻き肩」「猫背」。
これらの根本には、“動かない肩甲骨” が大きく関わっています。
肩甲骨は、肋骨の上を滑るように動く“浮いた骨”。本来は 8方向以上の多方向性の動き が可能ですが、デスクワーク中心の生活では、その動きが著しく低下します。
そしてガチガチに固まった肩甲骨は、首・肩の不調だけでなく、姿勢、呼吸、代謝までも悪化させてしまいます。
そこで注目したいのが ピラティスによる肩甲骨ワーク。
実はピラティスは、肩甲骨まわりの筋肉を正しく働かせ、胸椎の動きを引き出し、肩の緊張を根本から取り除く非常に効果的なトレーニングです。
本記事では、なぜピラティスが肩甲骨はがしに最適なのかを、解剖学・運動学の視点から科学的に解説し、さらに自宅でできるエクササイズも紹介します。

1|なぜ肩甲骨は固まるのか?現代人に起きている「肩の問題」
まずは、肩甲骨が固まりやすい理由を整理しましょう。
肩甲骨が動かない原因は、大きく4つあります。

① デスクワークによる“肋骨の固定”
パソコンやスマホを触る姿勢は、
・肘が前に出て
・胸が丸まって
・肩甲骨が外・上にズレる
という状態を長時間作り出します。
この状態が続くと、
肋骨が固まり、肩甲骨が動く“土台”が使えなくなる
ため、肩甲骨はどんどん滑らなくなります。
② 胸椎(背骨上部)が硬くなる
肩甲骨の動きと胸椎の動きはセットです。
胸椎が伸びたり回ったりしなければ、肩甲骨は正常に動けません。
胸椎の柔軟性低下は…
- 猫背
- 巻き肩
- 浅い呼吸
- 肩こり・首こり
につながります。
③ 前鋸筋・菱形筋・下部僧帽筋が働いていない
肩甲骨を滑らかに動かす筋肉が弱くなると、
肩甲骨は“浮いた板”のように不安定になります。
特に弱くなりやすいのは…
- 前鋸筋(肩甲骨を肋骨に引きつける)
- 下部僧帽筋(肩甲骨を下げる)
- 菱形筋(肩甲骨を寄せる)
これらが働かないと、代わりに
肩周りの大きな筋肉(僧帽筋上部・肩周り) が過剰に働き、肩がパンパンに…。
④ 肩を「上げて力む」癖
力んで肩をすくめる癖がある人は、肩甲骨まわりが慢性的に緊張しています。
この癖は、ストレスや不安、集中姿勢とも関連します。
2|ピラティスが“肩甲骨はがし”に最適な理由
ピラティスでは、肩甲骨の動きを非常に重視します。
実はピラティスは、肩甲骨の動きを整える理想的なエクササイズ構造が備わっています。

① 肩甲胸郭リズムを整えるから
肩を上げる・下げる・回すとき、
肩甲骨と上腕骨は特定の比率(2:1)で動く
という“肩甲胸郭リズム”があります。
ピラティスはこのリズムを崩さないよう、
胸郭 → 肩甲骨 → 上腕骨
の順番で動かすため、
- 肩が上がらない
- 首が緊張しない
- 肩甲骨が滑らかに動く
という理想の動作が身につきます。

② インナーマッスル(前鋸筋・下部僧帽筋)が自然と働く
ピラティスは小さな動きやコントロールを大切にするため、
肩甲骨の安定化筋(前鋸筋・下部僧帽筋)が自動的に働きます。
特に前鋸筋は“肩甲骨はがし”に超重要。
ここが働くと、肩甲骨が肋骨に張り付きながら滑らかに動くようになります。
③ 胸椎をしっかり動かす種目が多い
胸椎が動くと、肩甲骨は自然と正しい位置に戻ります。
ピラティスでは…
- ロールアップ
- スワン
- スパインツイスト
- サイドベンド
など、胸椎の伸展・回旋・側屈を引き出すエクササイズが豊富。
胸椎が動けば、肩甲骨は一気に軽くなります。
④ 呼吸で肋骨が広がる→肩の力みが抜ける
ピラティスの呼吸(胸式ラテラル呼吸)は
肋骨の横の広がり を引き出し、肩の緊張を減らします。
呼吸が変わると、自然と力みが消え
肩まわりの硬さも緩むため、姿勢が整いやすくなります。
3|肩甲骨が動くと姿勢が変わる“科学的理由”
ただのストレッチではなく、
“肩甲骨そのものの動き”を改善することが姿勢改善のカギです。
① 肩が下りて首が長く見える
肩甲骨の下方回旋が働くと、
僧帽筋上部の緊張が抜け、肩が下がります。
結果…
- 首が細く長く見える
- 猫背が改善
- デコルテが綺麗に
という“姿勢美人効果”が生まれます。
② 胸が開いて呼吸が深くなる
肩甲骨は肋骨の動きと密接。
肩甲骨が自由に動けば、
胸郭全体が広がり 呼吸の量が増える ので、
- 疲れにくい
- 太りにくい
- 姿勢が保ちやすい
など、全身の変化に繋がります。
③ 骨盤の位置まで整う
肩甲骨と骨盤は“筋膜ライン”でつながっています。
特に背中のスパイラルライン・ラテラルラインは、
肩 → 肋骨 → 腰 → 骨盤 まで続き、
肩甲骨の位置が変わるだけで、
骨盤の前傾・後傾の癖まで軽くなることがあります。
④ 腕の動きがスムーズになる
肩甲骨が動いてくれれば、肩が上がらず、
肩周りの過緊張が改善します。
腕を上げる、回す、引く、といった動作が
“軽い!”と驚く方も多いです。
4|自宅でできる「肩甲骨ピラティス」3選
ピラティスの要素を入れた、効果が出やすい動きを厳選しました。
① スキャプラ・アイソレーション(肩甲骨の独立運動)
やり方
① 四つ這いになる
② 肩甲骨だけを寄せる(胸が床へ)
③ 肩甲骨だけを広げる(背中を丸めすぎない)
ポイント
・腕ではなく“肩甲骨の動き”に集中
・肘は曲げない
・呼吸は止めない
→ 肩甲骨を肋骨に沿って滑らせる練習になります。
② ワンアーム・スライド(前鋸筋活性)
やり方
① 横向きで肘をつく
② 上の手を前にスライドさせる
③ 脇の下から伸びる感覚を味わう
ポイント
・肩をすくめない
・手を遠くに伸ばすイメージ
・脇から肋骨の横が伸びる感覚
→ 前鋸筋の活性により肩が軽くなります。
③ スワン準備(胸椎伸展)
やり方
① うつ伏せ
② 胸を軽く持ち上げる
③ 肩甲骨を下げながら胸を広げる
ポイント
・お腹は薄く長く
・首は伸ばすだけ(反らない)
・肩は下げる
→ 胸椎伸展が出ると、肩甲骨の位置が一気に整います。
5|Nピラティスでは肩甲骨をどう改善するのか?
Nピラティスでは、単に「肩周りを動かす」だけでなく、
姿勢・動作・筋バランスを総合的に評価して改善 します。
① 理学療法士・トレーナーによる動作分析
・肩甲胸郭リズム
・胸椎の柔軟性
・肋骨の動き
・姿勢タイプ(巻き肩・猫背など)
をチェックし、原因を明確にします。
② マンツーマンで肩甲骨の正しい使い方を習得
ピラティスリフォーマーやチェア、タワーを使うと
自分では動かしにくい肩甲骨の動きが引き出されます。
③ 1ヶ月で“肩の軽さ”が定着する人が多い
ピラティスで
・胸椎の柔軟性
・前鋸筋の活性
・呼吸の改善
が整うと、肩の軽さが継続しやすくなります。

6|肩甲骨から姿勢を整えることで、全身が変わり始める
肩甲骨は「姿勢の要」です。
肩甲骨が動くと…
- 肩こり・首こりが消える
- 肩が自然に下りてデコルテが綺麗に
- 呼吸が深くなる
- 代謝が上がる
- 猫背が改善する
- 腕が楽に上がる
- 骨盤まで整う
と、全身に変化が起きます。
ピラティスは単なる“肩甲骨はがし”ではなく、
肩甲骨を正しいメカニズムで動かし、姿勢を根本から再教育するトレーニング です。
ガチガチの肩をリセットして、
しなやかで動く肩甲骨、美しい姿勢を一緒につくっていきましょう。









