変形性膝関節症とは、膝関節の軟骨がすり減り、膝の変形や痛みを伴う疾患です。進行性であり、放置すると変形が強まり、歩行に大きな影響を及ぼすこともあります。
主な症状
- 膝の痛み(特に歩き始めや階段の上り下り)
- 膝の腫れや熱感
- 関節のこわばり(朝の動き始めに感じやすい)
- 可動域の制限(膝が伸びにくい・曲がりにくい)
- 進行するとO脚のような変形

膝関節の解剖学的な仕組み
変形性膝関節症を理解するには、まず膝関節の構造を知ることが大切です。
膝関節は主に以下の要素から成り立っています。
- 骨:大腿骨(太ももの骨)、脛骨(すねの骨)、膝蓋骨(お皿の骨)
- 軟骨:骨の表面を覆い、クッションの役割を果たす
- 半月板:膝関節の内側と外側にあり、荷重を分散し安定性を高める
- 靭帯:前十字靭帯・後十字靭帯・内側側副靭帯・外側側副靭帯があり、膝の安定に関与
- 筋肉:大腿四頭筋(膝を伸ばす)、ハムストリングス(膝を曲げる)、内転筋群、大臀筋などが関与
膝は「蝶番関節」と呼ばれ、基本的には屈伸運動が中心ですが、わずかに回旋も起こります。この繊細な動きと構造が、加齢や負荷によってバランスを崩しやすい原因です。
変形性膝関節症では、まず関節軟骨がすり減ることから始まり、やがて骨の変形や半月板の損傷が進みます。その結果、痛みや動作制限が生じてしまいます。
変形性膝関節症の原因
変形性膝関節症は「軟骨がすり減る病気」とよく言われますが、実際にはさまざまな要因が絡み合って発症します。
1. 加齢
加齢とともに軟骨の弾力性や再生力が低下し、摩耗しやすくなります。
2. 体重増加
膝は体重の約3〜5倍の負荷がかかるといわれており、体重増加は大きなリスク因子です。
3. 筋力低下
特に**大腿四頭筋(ももの前の筋肉)**の筋力低下は、膝の安定性を損ない、軟骨への負担を増大させます。
4. 姿勢や歩き方の癖
O脚やX脚などのアライメント不良、膝をねじるような歩行習慣は、関節に偏った負荷をかけます。
5. 過去のケガ
半月板損傷や靭帯損傷などの既往がある場合、膝関節の変性が進行しやすくなります。

変形性膝関節症の治療と運動療法の重要性
治療は大きく分けて、
- 保存療法(運動・薬物・装具など)
- 手術療法(人工関節置換術など)
があります。
特に保存療法の中心は運動療法です。適切なエクササイズは、
- 筋力強化
- 関節の安定化
- 血流改善
- 体重管理のサポート
につながり、痛みの軽減や進行予防に効果的です。
論文でも「運動療法は変形性膝関節症の一次的治療として推奨される(Fransen et al., 2015, Ann Intern Med)」と報告されています。
変形性膝関節症に効果的なエクササイズ
ここでは自宅でも取り入れやすい運動を紹介します。
1. 大腿四頭筋の強化(膝伸ばし運動)
大腿四頭筋は大腿骨の前面に位置し、膝蓋骨を介して脛骨に付着します。膝を伸ばす作用を持ち、膝関節の安定に直結します。
やり方
- 椅子に腰掛ける
- 膝をまっすぐに伸ばし、つま先を上に向ける
- 5〜10秒キープしてゆっくり下ろす
- 左右10回ずつ×2〜3セット
→ 膝の安定性を高め、痛みを軽減します。

2. ハムストリングスのストレッチ
ハムストリングスは大腿骨後面から脛骨・腓骨に付着し、膝を曲げる作用を持つ筋群です。硬くなると膝の可動域を制限し、歩行時に膝痛の原因となります。
やり方
- 床に座り、片足を伸ばす
- 体を前に倒して太ももの裏を伸ばす
- 20〜30秒キープ×左右2セット
→ 膝の動きをスムーズにし、歩行を楽にします。
3. ヒップリフト(お尻の筋肉強化)
大臀筋は骨盤から大腿骨に付着し、股関節を伸展する作用を持ちます。お尻の筋力が低下すると膝関節への負担が増えるため、鍛えることで膝の保護につながります。
やり方
- 仰向けに寝て、膝を曲げて足を床に置く
- お尻を持ち上げ、肩から膝まで一直線にする
- 5秒キープして下ろす
- 10回×2セット
→ お尻や体幹を強化し、膝への負担を軽減します。
4. カーフレイズ(ふくらはぎの強化)
下腿三頭筋(腓腹筋・ヒラメ筋)は膝下からアキレス腱にかけて走行し、歩行や立位でのバランスを支えます。
やり方
- 段差を使用します
- かかとを持ち上げて背伸び
- ゆっくり下ろす
- 15回×2セット
→ 下肢全体の血流を改善し、膝の安定性も高めます。
5. 太ももの内転筋トレーニング
内転筋群は骨盤から大腿骨内側に付着し、股関節の安定に重要です。弱化するとO脚傾向が進み、膝への負担が増えます。
やり方
- 横向きに寝て、下側の脚を伸ばす
- 下の脚を床から少し浮かせて10秒キープ
- 左右10回ずつ
→ O脚傾向を予防し、膝のバランスを整えます。

日常生活で気をつけたいポイント
エクササイズに加えて、生活習慣の工夫も重要です。
- 正座や深いしゃがみ込みを避ける
- 体重管理を心がける
- 階段よりエレベーターを選ぶ(痛みが強いとき)
- 膝を冷やさず温めて血流改善
- クッション性の高い靴を履く
まとめ
変形性膝関節症は、
- 加齢
- 体重増加
- 筋力低下
- 姿勢や歩き方の癖
などが原因で起こります。
しかし、正しい運動療法と生活習慣の工夫で、進行を抑え、痛みを軽減することが可能です。
Nピラティス柏店では、理学療法士が一人ひとりの膝の状態を評価し、最適なエクササイズを提案しています。
「膝の痛みで運動をあきらめていた」方も、安心して始められるサポート体制があります。
膝の健康は、人生の「動ける時間」を大きく左右します。ぜひ今日から少しずつ運動を取り入れてみてください。








