「疲れているのに眠れない」「夜中に何度も目が覚める」「朝起きてもスッキリしない」——。 こうした“睡眠の質”に関する悩みは、年齢や生活習慣に関わらず多くの方が抱えています。実はこの問題、意思の問題やメンタルの弱さではなく、体の使い方や自律神経の状態が大きく関係していることが分かってきています。
本記事では、理学療法的な視点を踏まえながら、
- なぜ睡眠の質が低下するのか
- なぜマシンピラティスが睡眠改善に向いているのか
- 睡眠の質を高めるための具体的なマシンピラティスエクササイズ
を、エビデンスと現場視点の両面から解説していきます。

なぜ「睡眠の質」は低下するのか?
睡眠の質が低下している方の多くに共通するのが、交感神経が優位な状態が続いているという点です。本来、人の自律神経は日中は交感神経、夜は副交感神経が優位になることで、自然な眠りに入れるよう設計されています。
しかし現代では、
- 長時間のデスクワーク
- スマートフォン・PCによる視覚刺激
- 呼吸の浅さ
- 運動不足、もしくは過度な運動
などが重なり、夜になっても体が“戦闘モード”から抜けられない状態が起こりやすくなっています。
特に見落とされやすいのが「体の緊張」です。肩・背中・腰・股関節周囲が無意識に緊張したままだと、脳は“安全ではない”と判断し、深い睡眠に入りづらくなります。
睡眠と深く関係する「呼吸」と「姿勢」
睡眠の質を語るうえで欠かせないのが呼吸です。呼吸は唯一、自律神経に直接アプローチできる運動と言われています。
浅く速い呼吸は交感神経を刺激し、 ゆっくりとした深い呼吸は副交感神経を優位にします。
ここで重要になるのが、
- 横隔膜
- 肋骨の動き
- 骨盤底筋との連動
といった呼吸に関わる身体構造です。
猫背や反り腰、スウェイバック姿勢などがあると、胸郭が硬くなり、横隔膜が十分に動けません。その結果、呼吸が浅くなり、夜になっても体がリラックスできない状態が続いてしまうのです。

マシンピラティスが睡眠改善に向いている理由
では、なぜ数ある運動の中でマシンピラティスが睡眠の質向上に向いているのでしょうか。
① サポートがあることで「過緊張」が抜けやすい
マットエクササイズでは、どうしても「頑張って支える」要素が強くなりがちです。一方マシンピラティスでは、スプリングや台のサポートにより、力を抜きながら動く体験がしやすくなります。
これは、常に力が入りやすい方・疲れやすい方にとって非常に重要なポイントです。
② 呼吸と動きを一致させやすい
一定のリズムで動けるマシンピラティスは、 「吸って準備、吐いて動く」といった呼吸誘導が自然に行えます。
呼吸と運動が一致すると、自律神経は徐々に副交感神経優位へと切り替わっていきます。
③ 胸郭・背骨・股関節を同時に整えられる
睡眠の質が低い方は、
- 胸郭が硬い
- 背骨が動かない
- 股関節周囲が緊張している
といった特徴を持つケースが非常に多く見られます。
マシンピラティスは、これらを同時に・安全に・段階的にアプローチできる点が大きな強みです。
睡眠の質を高めるマシンピラティスエクササイズ3選
ここからは、実際に睡眠の質改善を目的として行いやすいマシンピラティスエクササイズをご紹介します。いずれも「鍛える」よりも「整える」ことを目的とした内容です。
① フットワーク(呼吸誘導バージョン)
リフォーマー上で仰向けになり、フットバーに足を乗せて行うフットワークは、 寝る前の姿勢に近いポジションで行えるのが特徴です。
ポイントは、
- 吐く呼吸で膝を伸ばす
- 吸う呼吸で戻る
- 足裏の感覚を丁寧に感じる
こと。
足裏からの入力は副交感神経を刺激しやすく、横隔膜と骨盤底筋の連動も感じやすくなります。
「布団に入っても頭が冴えてしまうタイプ」の方に特におすすめです。
② マーメイド(胸郭フォーカス)
マーメイドは、肋骨と背骨の側屈・回旋を引き出すエクササイズです。
睡眠の質が低い方は、
- 肋骨が広がらない
- 呼吸が背中に入らない
といった特徴が見られます。
マーメイドでは、
- 吐く息で体側を伸ばす
- 吸う息で肋骨が広がる感覚を感じる
ことで、呼吸量そのものを増やすことができます。
夜に考え事が止まらない方、ストレスを溜め込みやすい方に適したエクササイズです。
③ ショルダーブリッジ(軽負荷)
ショルダーブリッジは、背骨を一つずつ動かす「分節運動」を促します。
睡眠の質が低い方は、背中〜腰にかけての緊張が強く、寝返りのたびに目が覚めてしまうことも少なくありません。
マシンのサポートを使い、
- 吐く呼吸で骨盤を後傾
- 背骨を順番に持ち上げる
ことで、背骨周囲の過緊張を安全に解放できます。
「夜中に目が覚めやすい」「腰が張って眠りが浅い」方におすすめです。
睡眠目的のピラティスで気をつけたいポイント
睡眠改善を目的とする場合、注意したい点もあります。
- 強度を上げすぎない
- 回数よりも呼吸の質を重視する
- “効かせる感覚”を求めすぎない
夜に行う場合は特に、 頑張らない・追い込まないことが重要です。
睡眠は「体力」ではなく、 **体を緩め、切り替える能力(調整力)**によって左右されます。
睡眠の悩みは「体の再学習」で変えられる

不眠や睡眠の質低下というと、 「自律神経」「ストレス」「メンタル」といった言葉で片付けられがちです。
しかし実際には、
- 呼吸がうまくできない体
- 緊張が抜けない姿勢
- 動きの少ない背骨
といった身体的な問題が背景にあるケースが非常に多く存在します。
マシンピラティスは、評価をもとに体の使い方を見直し、 もう一度“リラックスできる体”を再学習していくための手段です。
「眠れない体」を責めるのではなく、 眠れる体へ整えていく。
そんな視点で、睡眠と向き合ってみてはいかがでしょうか。
睡眠の質を変えたい方こそ、 ぜひ一度、ご自身の呼吸や体の緊張状態に目を向けてみてください。








