「背筋を伸ばすように意識しているのに、なぜか疲れる」
「良い姿勢を保とうとすると、肩や腰がつらくなる」
Nピラティスでも、とてもよく聞くお悩みです。
実はこれ、“姿勢を良くしようとすること”自体が間違っているわけではありません。
問題なのは 姿勢の作り方・考え方 にあります。
この記事では、
- なぜ「姿勢を良くしているのに疲れる」のか
- 多くの人が無意識にやっている勘違い
- 本当に楽になる姿勢の考え方
- ピラティスでどう変えていくのか
を、解剖学と現場目線を交えて解説します。
誤解されやすいポイント①「背筋を伸ばす=良い姿勢」だと思っている
なぜ疲れる?|解剖学的な理由
背筋を伸ばそうとして起こりやすいのが、胸椎の伸展不足を腰椎で代償する姿勢です。
本来、姿勢を支える背骨は
- 頸椎:可動性
- 胸椎:回旋・伸展
- 腰椎:安定性
という役割分担があります。
しかし現代人は、長時間の座位やスマホ操作により胸椎の可動性が低下しがちです。その結果、胸を張ろうとすると胸椎ではなく腰椎を反らせてしまいます。
この状態では、脊柱起立筋や腰部の筋群が過剰に働き、常にブレーキをかけたまま立っている状態になるため、疲労が溜まりやすくなります。
まず最も多い勘違いがこれです。
✔ 胸を張る
✔ 肩を後ろに引く
✔ お腹に力を入れて固める
一見すると「良い姿勢」に見えますが、
実際には 体を固めて無理やり形を作っている状態 です。
この姿勢では、
- 背中の筋肉
- 腰回りの筋肉
- 首・肩の筋肉
が常に緊張し続けます。
その結果、
👉 立っているだけ・座っているだけで疲れる
👉 長時間キープできない
👉 家に帰ると一気にだるくなる
という状態が起こります。
良い姿勢とは「力を入れて作る形」ではなく、
必要なところが自然に支えてくれている状態 です。

誤解されやすいポイント②「姿勢は意識すれば保てる」と思っている
なぜ意識だけでは無理?|神経・筋の仕組み
姿勢保持は「意識」ではなく、無意識下で働く抗重力筋と神経制御によって行われています。
特に重要なのが
- 腹横筋
- 多裂筋
- 骨盤底筋
- 横隔膜
といったインナーユニットです。
これらは常に弱い収縮を保ちながら、重心のわずかな変化に反応しています。しかし、機能低下が起きると表層筋(腹直筋・脊柱起立筋・僧帽筋上部など)が代わりに姿勢を支えようとします。
結果として、意識して姿勢を保つほど疲れるという現象が起こります。
「姿勢は意識の問題」
そう思っていませんか?
確かに意識は大切ですが、
意識だけで姿勢を保ち続けることはできません。
なぜなら、姿勢は
- 筋力
- 柔軟性
- 関節の位置感覚(ボディイメージ)
これらのバランスで成り立っているからです。
例えば、
- 胸椎(背中)が硬い
- 股関節が動きにくい
- 腹部インナーがうまく働かない
こうした状態では、
いくら「姿勢を良くしよう」と意識しても
体は代償動作で支えようとします。
結果として、
👉 首・肩・腰に負担が集中
👉 疲れやすい姿勢になる
という悪循環に入ります。

誤解されやすいポイント③「疲れる=筋力不足」だと思っている
本当の原因|筋力ではなく筋活動の偏り
姿勢保持に必要なのは「強い筋力」ではなく、適切なタイミングでの筋活動です。
解剖学的には、姿勢が安定している人ほど
- 表層筋:最小限の活動
- 深層筋:持続的・低負荷活動
という特徴があります。
一方、疲れやすい姿勢では
- 深層筋が働かない
- 表層筋が常に活動し続ける
という逆転現象が起きています。
これは筋トレでは解決しにくく、「使い方の再学習」が必要な状態です。
姿勢がつらいと、
「筋力が足りないから鍛えなきゃ」と考えがちです。
しかし実際には、
使いすぎている筋肉と、使えていない筋肉のアンバランス が原因のことがほとんど。
例えば、
- 表層の腹筋・背筋は頑張っている
- でも腹横筋や横隔膜はサボっている
この状態では、
頑張っている筋肉が常に働き続け、疲労が抜けません。
「疲れる姿勢」は、
筋力不足ではなく 使い方の問題 なのです。

誤解されやすいポイント④「骨盤だけ整えれば姿勢は良くなる」
姿勢は“連結構造”で成り立っている
骨盤は姿勢の土台ですが、骨盤単体では機能しません。
骨盤の上には脊柱が積み木のように連なり、さらに肋骨・頭部が乗っています。この連結の中で特に重要なのが、肋骨と横隔膜の位置関係です。
横隔膜は呼吸筋であると同時に、体幹安定に大きく関与します。肋骨が開いたまま・動かない状態では、横隔膜は本来のドーム状を保てず、腹圧が適切に高まりません。
その結果、体幹が不安定になり、骨盤や腰部を力で固定する姿勢になってしまいます。
骨盤は確かに大切です。
ですが、骨盤だけを意識しても姿勢は楽になりません。
姿勢は
- 骨盤
- 背骨(特に胸椎)
- 肋骨
- 頭の位置
これらが連動して初めて安定します。
特に重要なのが 肋骨と呼吸。
呼吸が浅く、肋骨が動かない状態では、
体幹は安定せず、無意識に力で支える姿勢になります。

「疲れない姿勢」の正体とは?
では、疲れない姿勢とは何でしょうか。
それは、
✔ 必要な筋肉が“勝手に”働いている
✔ 力を入れている感覚が少ない
✔ 呼吸が自然にできる
✔ 長時間でも崩れにくい
こうした特徴を持つ姿勢です。
つまり、
姿勢を頑張っている感覚がない状態 こそが理想です。
ピラティスが「疲れない姿勢づくり」に向いている理由
ピラティスでは、
- 背骨の動き
- 肋骨と呼吸
- インナーマッスルの協調
をとても大切にします。
単に「正しい姿勢を教える」のではなく、
✔ 動ける背骨をつくる
✔ 支えるべき筋肉を目覚めさせる
✔ 力を抜いても安定する感覚を学ぶ
これが、ピラティスの強みです。
Nピラティスでも、
「姿勢を意識しなくても楽になった」
「立っているのがつらくなくなった」
という声を多くいただきます。

まず見直してほしい3つのポイント
① 胸を張りすぎていないか
② お腹を固めすぎていないか
③ 呼吸が浅くなっていないか
もし当てはまるなら、
それは「頑張る姿勢」になっているサインです。
まとめ|姿勢は「頑張るもの」ではない
「姿勢を良くしているのに疲れる」
それは、あなたの体が悪いわけではありません。
✔ 姿勢=形だと思っていた
✔ 意識で何とかしようとしていた
✔ 力で支えるクセがついていた
この勘違いに気づくだけで、体は大きく変わります。
姿勢は、整えるものではなく、整っていくもの。
Nピラティスが大切にしている姿勢の考え方
Nピラティスでは、「正しい姿勢を教える」ことをゴールにはしていません。
私たちが大切にしているのは、
- どの関節が動き、どこで支えているのか
- なぜその姿勢になるのか
- どこが代償して頑張っているのか
といった体の中で起きていることを理解し、再構築していくことです。
姿勢は結果であり、原因ではありません。
呼吸・背骨・関節の動き・筋の協調性が整った結果として、
「意識しなくても楽な姿勢」が自然と現れてきます。
監修視点|評価と“動きの再学習”というアプローチ
疲れない姿勢づくりにおいて重要なのは、単なるエクササイズの提供ではありません。

Nピラティスでは、
- 姿勢の見た目
- 動作中の代償パターン
- 呼吸と肋骨の動き
- 関節ごとの可動性と安定性
といった評価をもとに、今の体が選んでいる“使い方”を丁寧に読み取ります。
そのうえで行うのが、**動きの再学習(Motor Learning)**です。
頑張りすぎている筋を休ませ、
本来働くべき筋が自然に働くように導く。
このプロセスを通して、
「姿勢を良くしようとしなくても疲れない体」へと変化していきます。
もし、これまで
「姿勢を意識しても楽にならなかった」
「正しいと言われたことが続かなかった」
そんな経験があるなら、
それはあなたの努力不足ではなく、アプローチが合っていなかっただけかもしれません。
姿勢は、頑張って作るものではなく、学び直すもの。
Nピラティスは、体の使い方そのものから整えていくことを大切にしています。








